もともとモデルハウスを建てることは決まっていたのですが、説明に何か一ひねりほしかったんです。住宅専門メーカーのモデルハウスの説明とどのように差異をつけていくかを考えたときに、「アトラクティブ(魅力的)かつインタラクティブ(双方向の)なツールがほしい」と。そうした中でARアプリの表現を思い出し、「きちんと見せ方について検討していこう」との方向性を固めました。

 私共の売りは「きくばり」という全館空調システムであり、見えない部分の空気の流れです。例えばこのモデルハウスにお客様が訪ねてきたときに、内側の見えない部分にお客様の意識を集中させないと、どうしても見える部分だけに目が行ってしまうんですね。壁の材質だとかインテリアだとか。しかし、ARソフトで見えない部分を可視化したことで、お客様の意識を我々のセールスポイントに引き寄せることができました。


皆さん、まずはARの仕組み自体を新鮮に感じられるようです

―― iPadでどのような使い方をされているのでしょう。

 手で持ちながら、空中にかざして利用します。カメラで家の中を撮影すると、壁の内側の空調ダクトの仮想画像が実際の映像に重なってくるイメージです。壁を透過して中が見えますので、非常に内容が伝わりやすくなります。このモデルハウスは2013年1月17日にオープンしましたが、それ以来、300人規模の方が訪れており、もちろんこのARソフトも体験しています。

―― 実際のお客様の感想は?

 「へえ、こうなっているんですか」と驚かれる方が多いですね。拡張現実に触れる機会が初めてという方も多くいらして、まずはARの仕組み自体が新鮮なようです。「どこまでが現実なんですか?」といった感じで(笑)、会話のきっかけとしてはとても重宝しています。緊張がほぐれて会話も弾むようになりますから。それに皆さん、最近はスマートフォンの普及でタッチパネルに慣れていますので、操作の容易さもポイントではないでしょうか。ご自身で操作される方も多く、滑らかな動きにも感心されます。電子版コミュニケーションツールとしてもよくできていると思います。

―― アプリの機能拡張についてはどのように考えていますか。

 このアプリの利点は、場所を選ばないところにあります。ここに足を運ばなくても、全館空調の仕組みを伝えられるわけですから。例えば大阪支店の担当者が、お客様に会議室で説明できてしまう。そうした意味で、使い方に広がりを持たせていきたいなと考えています。その場合はダクトだけでは物足りませんので、離れた場所からよりリアルに現場を感じられる仕掛けが必要になると思っています。

 また、「どうしてここにダクトを使ったのか」という意味づけを示すことができれば、よりわかりやすくなります。例えばキッチンの作業スペースの上には空気の吹き出し口がありますが、理由はその場所で調理をするからです。このシステムでは、生活上での外せないポイントを決めて吹き出し口を配置しています。通常、エアコンだと壁際にしか付けられないわけですが、この全館空調の吹き出し口の自由度は非常に高いものです。とくに、脱衣場には必ず設置するようにしています。寒暖の激しい温度差によるヒートショックの問題が深刻化していますので。その意味づけをセットにして説明できるようになれば、さらに効果的なツールとしてランクアップするのではないでしょうか。

―― TMLに今後望むことは。

 TMLさんはビジネス基盤がしっかりしていて、安心感をもって仕事をすることができました。ARアプリというとどうしてもゲームやエンターテインメント要素が強く、ビジネス用途で取り組まれている会社はいまだに少数です。今回の場合、多少は遊び心も必要でしたが、最も求めていたのは図面に忠実でリアルな表現でしたから、建築用のCAD図を理解いただいた事などを含め、そこに関しては問題はありませんでした。今後は、さきほど述べたような機能拡張について一緒に作業していきたいと考えております。お客様にはもちろん、他部門の社員にみせても好評ですので、azbilグループ全体での横展開の可能性もあるかもしれませんね。


  導入事例のPDFはこちら